唐津ぐい呑み
唐津ぐい呑みの魅力は、素朴な土の温もり、土の味わい。「陶工」の目指したものそれは、「用の美」

古唐津の魅力-陶片


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古唐津の技法

九州一円の窯場で古唐津系諸窯。

九州一円の窯場で古唐津系諸窯は、それぞれの地域性と藩政事情、領域性を考慮した中分類の小範囲の窯場の陶器は、主として高麗末期前後の朝鮮の陶技と、李朝中期前後の南朝鮮の陶技が源流となっているようです。

数多くの広地域の(佐賀・長崎両県にお呼ばれる)古唐津系の諸窯には、岸嶽系、椎の峯系陶技の分派支窯の潮流と、文禄の役以後の帰化朝鮮陶工による古唐津・多久古唐津・平戸古唐津の三派の支窯が相交錯して発達したものと思われます。

この古唐津系陶技の二潮流は、成型技法引釉調の中には共通的な内容が発見されるようです。

しかしながら、作品そのものから感受する造形美には違った雰囲気の作調が見られます。


肥前の古唐津系とほとんど同一工程と同一陶技が、薩摩の苗代川の「叩き手」技法の中に伝承されているようです。

筑前の古高取、古上野の皿山創業の作品にきわめて類型的なものがあるようです。

筑前の諸窯は織部・遠州の影響をうけて発達し、釉調の中には古唐津と共通したものが伝承されたようです。

成形技法は多分に京風なものとなり、意匠形状の中には美濃瀬戸窯や京窯の影響があらわれているようです

古唐津の造形美をつちかっている特長の一つは土味、つまり胎土の持つ材質美です。

主として単味を用いている窯場の分布が岸嶽系、松浦唐津系、武雄唐津系、平戸唐津系と幅ひろいので、それぞれに胎土上には特長があります。

鉄分の多い土・少ない土、砂目の荒い土・細い土、粘りの強い土・少ない上がありますが、また水漉(すいひ)の荒い上・粒子の細い土など個性的な土味です。

この土味が「蹴りろくろ」による成形や削り仕上げでなお一層造形性を際だたせているようです。

「輪積み・叩き手」による甕類、壷類、瓶類の成形や「水引き」による碗や皿類、酒器類に見る力強い意匠はまさに古唐津の持つ、美濃陶には見られない李朝陶技の純粋な造形美です。

加えてシンプルな中にも伸びのある運筆の絵唐津文様の効果や、彫絵、刷毛目、指がき、象嵌による装飾効果も力強く感じられます。

単調な土灰釉や斑唐津(から灰)の失透祖、あるいは天目釉を施釉し、酸化焔、還元焔、あるいは中性焔で見事に焼成した窯変効果の中に神秘な古唐津の造形美が限りなく底流していると思います。

「唐津その歴史」も参照

古唐津系の胎土について

一般に古唐津系の陶土は単昧が多い

古唐津-陶片数多い古唐津の伝世品の中には、それが焼成された窯場を、その窯場と正確に確認することはなかなか容易なことではありません。

研究者によっても窯名が異なることがあるようです。

それほど古唐津の鑑査考証はむずかしく、筑前の古上野の作品と古唐津直系との区分についても困難なようです。

そのため、古唐津の贋作が多く出回っているのではないでしょうか。


このような場合に立証資料となるのは窯跡の出土陶片であり、出土した陶片による胎土の比較研究が重要になっているようです。

一般に古唐津系の陶土は単昧が多いとされていますが、同じ窯場においても良士を発見すると、在来の陶土と混入して使用する場合もあったものと推察されます。

また陶工たちは良土の発見につとめ、採士に便利な地に移窯していたようです。

胎士は
「轆轤(ロクロ)成型」「叩き手」「板台こし」の場合に、成型上必要な、ある程度の土の粘力が必要で、粒子は均一にして、有機鉄分の少ない成分の単昧の土が好まれます。

また、耐火度も、SK28番程度の耐火度が必要です。(溶倒温度1630℃)
(耐火煉瓦などで使用される耐火度(SK番号)JIS R2240-76規定-ゼーゲルコーンの番号SKでその耐火度を示しているようです。 )

成型時の細工の際に意匠形状が崩れることなく、焼成の折に歪み、亀裂を生じない可塑性のある胎上が望ましく、収縮率も少なく、焼締りのよい土を選択することが通常です。

しかし、古唐津陶の胎土は、単味の地土を木漉(すいひ)をせず、細かい篩いにかけることもなく、多少の不均一な粒子の荒い土をそのまま用いるより、かえって古唐津陶の力強い、粗野な持味、個性美を豊蔵しているといえると思いるようです。

唐津の陶土は「砂目の土」と言われていますが、川砂類が混入しているのではなく、陶土の粒子が粗で不均一な粘土を意味していると思いるようです。

これは単味の土なので、ある窯の土は鉄分が多く粒子が荒いもの、あるいは、鉄分が少なく、細かく、収縮率が低いといって、胎土そのものの特徴が作品にあらわれているようです。

古唐津系の岸嶽系の窯場でも、帆柱窯や皿屋窯は特に粒子の荒い砂目の土味をみせており、飯胴甕窯の土は帆柱窯より幾分細かな砂目です。

武雄唐津系の内田皿山や黒牟田皿山の窯場の上は、粘力があり、細い上味をみせているようです。
武雄系南部の内田皿屋、小山路の窯の作品は鉄分が非常に多く、褐色を呈し、還元焔焼成の折はねずみ色を持味としているようです。

絵唐津として有名な道園窯、阿房の谷、藤の川内諸窯の胎土は粘力強く、耐火度も高く、粒子もある程度細かく鉄分も少ないので、鉄砂の絵文様もあざやかな発色をみせているようです。

平戸系の木原皿山などの胎士は炻器(せっき)、半磁器を思わせるような持味をみせ、これに対して、古唐津系の山瀬の上下の窯などは粘力が強く、かえって削りのあとに亀裂がでるような土味もあるようです。

この唐津陶の胎土の持味が、朝鮮の釉薬と相調和して、さらに「唐津らしい」、きわめて自然な個性美をそなえていると思いるようです。

古唐津の土

唐津地方では一ヵ所に大量の土があることはほとんどなく、少しずつしかありません。
佐賀・長崎の両県を合わせると、古い窯跡は200ヵ所以土ありますが、窯ごとに土が違っています。

同じ釉でも土が違えば、作品は違ってきます。
この地方では17世紀ごろまで、山から採取した土をそのままこねて使っていましましたが、17世紀後半、椎の峯派の諸窯が、水簸した土を使うようになったようです。

古唐津時代はほとんどが一種類の土を使っていたようです。

その後、御用窯になって、高麗茶碗を写すようになってから、高麗土に似るように各種の土を混ぜ合わせて使うようになったようです。

古唐津で最も良い土とされるのは岸岳の飯洞甕、帆柱、皿屋、道納屋谷などの窯の土といわれています。

これらの土は鉄分が少なく、長石が主成分の透明釉をかけたときに灰白色、枇杷色、うす桃色、うす鼠色などになり、無釉の部分に火が直にあたると狐色にこげができます。

ちりめん皺がよく出て、火にも強いのです。
特殊な土として、出瀬窯と小十官者窯の土がありますが、山瀬土の焼色はビスケット色、小十官者窯の土は磁器土のようにきめ細かく、強く焼締まります。


古唐津の土は岸岳・松浦・武雄・平戸などそれぞれの窯場で異なっていますが、総じていえば鉄分のある淡褐色から濃褐色までの発色をする砂目の土といえるようです。

唐津焼の大きな魅力のひとつはその土味ですが、同じように見えてもそれぞれに個性的で、例えば山瀬窯の白い細かい土などは上野焼や高取焼などよりも一般的な唐津の土味とは違ってみえる感じです。

岸岳系のかすかに火色を帯びたざんぐりとした荒い土味や、松浦系のキッネ色や褐色にカリリと焼けた土味などは、まさに古唐津という”やきもの”の醍醐味といえると思います。

胎土は伝世すると擦れたり汚れたりで、それが作られた窯がわかりにくくなります。

陶片では、風化しやすい釉の部分と異なり、土中でも無釉の上の部分はほとんど風化あるいは酸化していないので、古唐津が生まれた時の状態と各窯の土味の違いがわかるようです。

古唐津の釉薬の種類は多くはありません。
鉄分を含む鉄釉(黒釉・褐釉・飴伯・柿釉)、木灰釉(土灰釉)、藁灰などで禾本科植物の灰を用いた斑釉、長石釉などで、ごく稀に赤あるいは緑の発色の銅釉があります。
この少ない釉の組み合わせで多彩な古唐津の世界が成り立っているようです。

それらの発色は同じ灰釉でも黄色っぽいのから灰色また淡緑色まで、また鉄釉ならば漆黒のものから褐色を経て黄褐色まで、藁灰釉も青みを帯びた白からピンク色や黄ばんだものまでさまざまな釉調があります。

古唐津を焼いたと思われる百ヵ所を超える窯で焼いていたのだからこれは当然のことなのですが、同種の釉薬でも窯の状態、温度、湿度、温度の上がり方など各々の完成が異なり同じものがないというのも唐津焼きの面白さのひとつといえると思います。


「唐津その歴史」も参照


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粉青沙器(粉粧灰青沙器)

唐津ぐい呑み-粉青沙器(粉粧灰青沙器)唐津ぐい呑み-粉青沙器(粉粧灰青沙器)
粉青沙器は印花文・象嵌文が先に発達し、剥地文・彫花文・鉄画文・刷毛文・粉粧文など白上粉粧の変化によって種類も多様になりました。

こうした粉青沙器は十五世紀初期すでに器形・文様・釉薬などから粉青沙器としての特徴を表わし始め、印花文・象嵌文・剥地文・彫花文系は世宗から世祖代まで、鉄画文・刷毛文・粉粧文系は成宗代まで殆んどその完成を見るに至ったのです。

粉青沙器の特質は、種々の粉粧法からくる力強くも、新鮮潤達な、そして自由奔放な粧飾意匠ですね。

唐津の源流ともいえる李朝の世界へ